【不動産権利】

土地の所有権:ベトナムでは土地は全人民所有という名の国有(土地法第 5 条)、個人所有は一切認められていない。

土地の使用権: 土地使用期限が完了した場合や国家が回収することを決定した場合には、土地使用権を国家に返還することとされている(土地法第 107 条)。 割当された土地使用権は、賃貸借・相続・担保化が許されている。また、使用期限内である・係争中でない等の条件を満たせば売買も可能である(土地法第 61 条)。

建物の所有権: 家屋、ビルについては個人資産として認められている。民法に従い、売買・交換・賃貸借・相続・担保化が認められている。

国家から土地使用権のリースを受ける者は省(行政単位)の土地管理機関に申請書類(2通)を提出しなければならない。

建物の賃借権 :建物の賃貸借の期間が 6 か月以上のものについては、原則として書面による契約、公証及び当局への登録が必要とされておりこれらの手続がされていない賃貸借契約は、裁判や仲裁により無効と判断されてしまう可能性がある。ただし、賃貸人が業として不動産業を行う者である場合には、当局への登録は不要と解されている。

建物の賃貸中に賃借物件の売買が行われた場合にも、既存の賃借人は、建物の買主に対して既存の賃借権を対抗できる。

 

・登録制度

ベトナムでは、土地使用権の贈与、相続、売買、賃貸、抵当などの契約の際には土地使用権登録所(Registration Office)での「登録(Registration)」がなされる(土地法第 46 条)。 国から新たに土地使用権を割当または賃貸された者や、新土地法発効日(2004 年 7 月 1 日)までに証書を受け取っていない有効な土地使用権者などに対しては「土地使用権証書」(赤手帳)が給付される(土地法第 49 条)。 「土地使用権証書」は省又は中央直轄市の人民委員会が発行する。権利者名、土地の所在・範囲、使用期間(始期・終期)、使用目的等が記載される。

土地については資源環境省の管轄、建物については建設省の管轄で別々。

 

・登記制度

2007 年から不動産登記制度も開始され、ピンクブック(権利証)が発行される。登記情報は公共の縦覧に供されている。

たが、整備状況は未だに悪く、土地使用権者、家屋所有者の確認は弁護士を介して政府機関に問い合わせる等の方法が必要である。 

 

権利の移転は、権利証明書上の名義変更あるいは譲受人を権利者とする権利証明書の新規発行によって効力が生じる。

 

【不動産売買・不動産賃貸借】

不動産は相対取引で、一般的な取引ルールが確立されていない。

(賃貸の初期費用として3ヶ月分が敷金・礼金となる場合が多い)

 

【不動産関連税制】 

付加価値税: 不動産の賃借料や建物の売買価格には付加価値税が課せられる(標準税率は 10%)。土地使用権の売買に対しては非課税。 

財産税: 土地使用権の賃借料は、財産税に該当する(一般にはリース料として認識されていることもあり、上述の通り公定地価に基づき計算される)。また建物の所有者は財産税の支払義務がある(0.05~0.1%) 

個人所得税: ベトナムに滞在する個人の場合、不動産売却益に対して個人所得税が課せられる(居住者(長期滞在者)は売却純利益の25%又は売却価格の 2%、非居住者(短期滞在者)は売却価格の 2%)

その他税: 法人税(標準税率 25%)、印紙など各種登録税

 

ベトナムでは、省・中央直轄都市人民委員会が土地価格を決定し、毎年 1 月 1 日に公開・公布する。この地価をもとに土地使用料、土地使用権の賃借料、土地使用権の取得税等が計算される(土地法第5・56 条)。この公定地価は、用地補償額の算定の際にも根拠となっている。 

 

【外国人・外国企業による不動産所有の制限】  

外国人・外国企業は、土地使用権の単独取得は原則としてできない。 

合弁企業を設立する場合(ベトナム個人・法人とパートナーを組む形態)で、ベトナム側パートナーが土地使用権を現物出資した場合には外国企業も土地使用権者となれる。(この形態の場合、ベトナム側パートナーが破産した時に土地使用権の帰属がどうなるのか明確な基準がなく、投資リスクの問題点として指摘されている。現状では裁判所の判断に託されている) 

それ以外の場合には、一般に外国企業は土地使用権を賃借することで土地の使用を行うこととなる。その場合の土地使用権者は国自身か又は国から土地使用権の割当てを受けた者のみに限られる(例外あり)。工業団地(IZ)や輸出加工区(EPZ)等においては、外国企業は土地使用権者であるデベロッパーからその土地使用権を賃借することとなる。仮に外国企業が第三者から土地使用権を購入した場合、土地使用権者の地位をそのまま継承はできず、土地使用権の賃借へと形態を変更させられることとなる。 

土地使用権の賃借人も土地使用権証書を取得することが原則であるが、手続き上の問題で取得できずに稼働しているケースも見られる。

 

外国人・外国企業の建物所有について

・製造業等の外国企業は、工場等の自己の業務用建物については所有が可能である。 

・製造業等の外国企業は、自己の労働者の居住用として共同住宅等の所有が可能である。 

・外国人による居住用建物の購入は、従来制限されていたが、2009 年より一定の条件を満たせば所有が可能となった。その場合、土地使用権に関しては最長で 50 年の長期にわたる賃貸借契約を締結することで所有に近い形態を取ることが可能となる(土地使用権者にはなれない。土地使用権の永久賃借も不可)。自用目的が原則であり、賃貸収益事業目的での不動産購入は極めて難しい。 

・不動産開発目的の外国企業については、100%外資の場合、工業団地などのインフラ整備を伴う特別な大規模開発事業等の場合に限定されている。その他の不動産開発は、合弁企業を設立するケースとなるが、住宅や事務所・店舗ビルの開発事業が可能である。 

外国人・外国企業の建物賃貸借については、リース業の許可を得ている者からの賃借が認められている。一般に居住用の賃貸アパートやリース工場が例としてあげられるが、これらの場合、土地使用権証書を取得する必要はなく、物件オーナーと賃貸借契約を結ぶことで足りる。 

なお、転貸借(賃料収益事業)は原則として不可で、賃借する物件は自己使用目的に限られるものとなっている。 

 

参考 JETRO外資に関する規制

ベトナム外資サブリース規制緩和へ向けて

2015年7月より、外国人によるサブリース投資が認められます。

 

 (1)現行法(外資が可能な不動産事業)

○販売または賃貸のための建物の建設投資(注1)
○インフラ付きで土地を賃貸するための土地の造成(工業団地など)
○不動産仲介、鑑定、コンサルティングなどの不動産サービス業
(2)改正案(新たに追加される不動産事業)
○転貸のための建物の賃借
○オフィスについては、建造済みの建物を購入または賃借して賃貸可能

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